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相続人の一人が遺産を使い込む?取り戻すための方法や組み戻しについて徹底解説!
相続においては、相続人が複数存在することが一般的です。そして、相続人同士で遺産分割協議を実施し、各相続人の遺産の相続割合や具体的な金額を決定します。
それでは、相続人の一人が遺産を使い込むような事態が発生した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?本記事では、相続人の一人が使い込んだ遺産を取り戻すための方法や遺産の組み戻しについてわかりやすく解説します。
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遺産を使い込むとは?
まずは「遺産を使い込む」という言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
遺産を使い込むとは、相続人の一人が被相続人の遺産を自己のために無断使用することを指しています。例えば、預貯金を引き出したり、生命保険の解約返戻金を着服したりするなど、その内容は多岐にわたります。
本来、相続は相続人同士の遺産分割協議によって相続割合や具体的な金額を決定します。しかし、特定の相続人が遺産を使い込んだ場合、当然ながら他の相続人にその事実を知らせることはなく、長期間気付かないままになってしまうリスクもあります。
相続をするかしないかの判断は 3 ヶ月以内に行う必要があるため、誰かが使い込みをしていると疑われる場合は早急に対応しなければいけません。なお、遺産の使い込みは犯罪行為に該当し、時効が存在する点も覚えておきましょう。
相続放棄や限定承認の期限について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
遺産の使い込みの 2 つのパターン
遺産の使い込みには、大きく分けて 2 つのパターンが存在します。本章では、それぞれのケースについて具体的な内容をご説明します。
生前の預金の使い込み
生前の預金の使い込みとは、被相続人(亡くなった人)が生きている間に、親族や近しい人がその預金を勝手に使うことを意味します。例えば、介護を任された家族や被相続人の通帳やキャッシュカードを管理している人などが、不正にお金を引き出し、個人的な目的で利用してしまうケースなどが該当します。高齢や病気などで被相続人の判断能力が低下している場合、このパターンが発生する可能性が高まります。
死後の預金の引き出し
死後の預金の引き出しとは、被相続人が亡くなった後、銀行口座が凍結される前に預金を引き出してしまう行為を意味します。例えば、葬儀費用の名目で引き出した預金を私的に利用してしまうケースなどが該当します。法的な観点では、相続が開始された時点でその預金は相続財産となり、他の相続人と分け合う必要があるため、この点は確実に覚えておきましょう。
遺産の使い込みを調査する方法
誰かが遺産を使い込んでいると疑われる場合、早急に調査を実施する必要があります。本章では、遺産の使い込みを調査する方法についてご紹介します。
自分で調査する
自分で調査を行う場合、被相続人の口座が存在する金融機関に対して取引履歴の開示請求を実施してください。これにより、過去の入出金履歴を確認できるため、不正な操作があれば使い込みの証拠になります。
ただし、取得できる情報は預貯金情報のみに限定されます。そのため、預貯金以外の遺産を使い込んだ可能性がある場合は、その他の調査方法を選択すべきだと言えるでしょう。
弁護士に依頼する
自分で調査する場合、預貯金以外の資産を調べることは困難ですが、弁護士に依頼することで効率的に調査を進めることができます。
弁護士は「弁護士会照会制度」の利用が認められており、預貯金情報以外にも証券口座の取引履歴や保険金の支払い状況、被相続人が所有していた不動産の記録など、様々なものを調査することが可能です。
また、弁護士をつけることで遺産を使い込んでいる本人に圧力を与えられるため、さらなる使い込みの被害を抑えることができます。さらに、多くの証拠を揃えておくことで交渉を有利に進められるため、弁護士への依頼は有効な手段の一つだと言えるでしょう。
裁判所に依頼する
ここまで、自身や弁護士による調査についてご紹介しましたが、これらの調査で情報収集できる対象は被相続人名義の財産に限定されます。なぜなら、金融機関はプライバシー保護の観点から、使い込みの疑いがある人の口座情報などを開示しないためです。
このような場合、裁判所に依頼して使い込みの疑いがある人の取引履歴を金融機関に対して開示請求できます。ただし、裁判所に依頼するためには裁判を起こし、審理に必要だと判断されなければならないため、この点には注意しておきましょう。
このように、遺産の使い込みを調査する方法は多岐にわたります。ご自身の状況に合わせて最適なものを選択し、使い込みの証拠を集めた上で、遺産を使い込んだ相続人と話し合いの場を設けてください。
使い込まれた遺産を取り戻す方法
使い込まれた遺産を取り戻すためには「不当利得返還請求」を行う必要があります。
不当利益返還請求とは「本来利益を得るはずの人が損失を被る形で別の人が利益を得る場合に、損失を被った人が本来得るはずだった利益を請求すること」と、民法第 703 条に明記されています。
遺産を使い込んだ相手と話し合いの場を設けたにも関わらず、交渉に応じてもらえなかった場合は不当利得返還請求で訴訟を起こすことになります。なお、不当利益返還請求が認められる条件は次の 4 つです。
1.使い込みをした人が他人の財産または労務によって利益を得ている
2.上記 1 が法律上の原因を満たしていない
3.ほかの相続人に損失が発生している
4.利益と損失の間に因果関係がある
上記の 4 つをすべて満たした場合は不当利得返還請求が認められます。条件を満たしていない場合は請求を取り下げられる可能性があるため、訴訟が無駄にならないように専門家へ事前相談することをオススメします。
不当利得返還請求の手続き方法
不当利得返還請求を行うためには、決められた手順に沿って手続きを進める必要があります。本章では、不当利得返還請求の手続き方法を 5 つのステップに分けて解説します。
Step.1 相手が不当利得を得た証拠を集める
不当利得を証明するためには、その人が遺産を使い込んだ証拠を揃えなければいけません。仮に証拠がなければ、せっかく不当利得返還請求をしても、相手に拒否される可能性が高まります。
例えば、
お金の流れを示すもの:銀行の取引明細、領収書
会話記録:メールや LINE 、通話録音で不当利得に関するやり取りが分かるもの
関係者の証言:第三者からの証言
など、あらゆる観点から使い込みの証拠を集めましょう。この時、感情的にならず冷静に情報を整理することが大切です。
Step.2 相手に不当利得返還請求をする
証拠を揃えたら、相手に不当利得の返還を求めます。この時、口頭ではなく書面やメールを利用することで、記録が残る形で請求できるため、後々のトラブル回避に繋がります。
書面作成を行う際には、「いつ」「どのように」利益を得たのかなど、具体的な内容を時系列で整理します。また、返還金額や期限を明記するなど、請求内容を明確化するとともに、事前に集めた証拠も忘れずに添付しましょう。
Step.3 相手と話し合う
不当利得返還請求を行ったら、直接または書面で話し合いの場を設けます。この時、感情的な言動は極力避けて、事実に基づいて話を進めることが大切です。
また、一方的に相手を責め立てるのではなく、相手の言い分や返還拒否の理由などを聞いて、ともに解決策を模索しようとする姿勢が求められます。なお、話し合いが難航しそうな場合は、弁護士などの専門家に同席を依頼することで、話を円滑に進められるようになります。
Step.4 合意書を作成のうえで支払い方法を決める
話し合いの結果、相手が返還を認めた場合、その合意内容を文書化して残すことが重要なポイントになります。口約束だけでは後からトラブルに発展するリスクがあるため、必ず合意書を作成しましょう。
合意書に記載すべき内容としては、返還金額や支払い期限、違約時の対応(支払いが遅れた場合の遅延損害金)などが挙げられます。そして、双方が合意書に署名・押印をして、それぞれ 1 部ずつ保管します。
Step.5 裁判所へ訴訟を提起する
相手が返還を拒否したり、合意に違反したりする場合は、裁判所に訴訟を提起します。集めた証拠を提出し、返還を求める理由を法律的に整理して提起を行いましょう。
そして、裁判所に提起内容が認められれば、相手が返還を強制されて遺産を取り戻すことができます。なお、不当利得返還請求訴訟は法的手続きの一種であるため、迷った場合は弁護士に相談することが有効な選択肢になります。
不当利得返還請求ができないケース
遺産を使い込んだ証拠を示せれば、不当利得返還請求で遺産を取り戻すことができます。しかし、中には不当利得返還請求ができないケースも存在するため、代表的なものをいくつかご紹介します。
時効が成立している
不当利益返還請求には「損失の発生から 10 年」という時効が設定されています。この時効を過ぎた場合、不当利益返還請求で遺産を取り戻すことは不可能になります。
そのため、遺産の使い込みが疑われる場合は早急に動くことが重要なポイントです。自分ひとりで解決できない場合は専門家に相談するなどして、手遅れになる前にアクションに移してください。
使い込みではないと判断される
特定の相続人が被相続人の財産を使っていたとしても、それが正当な理由によるものであれば「使い込みではない」と判断されます。
例えば、以下のようなケースが該当します。
・被相続人に依頼されて出金した(生活費、介護費用など)
・被相続人の必要経費のために使用した(葬式費用など)
・被相続人から贈与された(贈与契約書などがある)
このように、介護や葬式のために使ったと主張された場合は、支払い明細の提示を要求するなど、証拠となるものを提出してもらって事実確認を行なってください。
また、銀行で口座名義人本人以外が出金するためには、委任状や銀行との面談が必要になります。被相続人の同意を得て出金したと主張された場合は、これらの証拠が残っているか?もあわせて確認しておくと良いでしょう。
遺産を使い込んだ人がお金を持っていない
遺産を使い込んだ人がお金を持っていない場合、遺産を取り戻すことができない可能性があります。
このような場合は「特別受益の持ち戻し」が有効な手段になります。特別受益とは「相続人が被相続人から受けた優遇的な遺贈・贈与」を意味する言葉であり、これは民法 903 条 1 項に明記されています。
特別受益の代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
このように、特別受益として認められるケースは限られているため、必ずしも遺産を取り戻せるわけではない点は覚えておきましょう。
特別受益の持ち戻しに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
参考:使い込まれた遺産の組み戻し
遺産の使い込みに対しては不当利得返還請求が有効な手段ですが、この請求をしなくても良いケースが存在します。
2018 年の民法改正により、 2019 年 7 月 1 日以降に死亡した場合、死亡した被相続人の預金を勝手に引き出した者以外の法定相続人全員の同意に基づき、死後に勝手に引き出された預金を遺産の中に組み戻し、それも含めた遺産の分割を実施することが可能になりました。
この時、遺産とみなされる使い込まれた財産の要件は次の通りです。
①処分された財産(使い込まれた財産)が相続開始時に被相続人の遺産であったこと
②財産が処分されたこと(使い込まれたこと)
③共同相続人全員が処分された財産を遺産分割の対象に含めることに同意していること
なお、上記の③に関して、財産を使い込んだのが共同相続人の一人である場合、使い込みをした共同相続人の同意は不要となります。そのため、仮に使い込みをした相続人が反対しても、他の共同相続人全員が同意すれば問題ありません。
このように、被相続人が死亡した後の預金の使い込みに関しては、対策が強化されたと言えるでしょう。ただし、あくまで遺産の組み戻しは「被相続人の死亡後」に限定された話であるため、生前に預金口座からお金を引き出していた場合などは不当利得返還請求を行う必要があります。
まとめ
本記事では、相続人の一人が使い込んだ遺産を取り戻すための方法や遺産の組み戻しについてわかりやすく解説しました。
使い込んだ遺産を取り戻すためには、使い込みの証拠を集めることから始めてください。そして、証拠が揃ったら不当利得返還請求を行うことで遺産を取り戻すことができます。
ただし、使い込みの証拠を集めることは容易ではなく、自分ひとりで進めることが困難なケースも存在します。また、不当利得返還請求には複数の条件が存在し、これらを満たしていない場合は請求権が認められません。
無闇に動いてしまうと思うような結果を得られず、使った費用が無駄になってしまうリスクがあります。そのため、不安な場合は専門家に助言を求めることをオススメします。
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