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財務分析における安全性とは?概要や 7 つの重要指標をわかりやすく解説!

会社の財政状況や経営状況を把握するためには、財務諸表を活用した財務分析が有効な手段になります。しかし、財務分析には様々な分類があり、目的に応じて適切なものを選ぶことが重要なポイントになります。
本記事では、財務分析における分類の一つである「安全性」について、概要や 7 つの重要指標を一挙にご紹介します。財務分析について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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財務分析とは?
まずは、財務分析の基礎知識についてご説明します。
財務分析とは、財務諸表を分析して様々な指標を算出することを意味します。財務分析を行うことで、会社の現状や課題を見える化でき、今後の戦略策定や意思決定などに繋げることができます。
なお、財務諸表とは、会社の財務に関する様々な書類を総称した言葉であり、次の 3 つが財務諸表の代表例として挙げられます。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
ただし、財務諸表という言葉は広義なものであり、状況に応じて「どの書類を指す言葉なのか」が変わります。そのため、上記の 3 つだけが財務諸表というわけではないので、この点には注意してください。
また、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の 3 つは「財務三表」とも呼ばれており、財務諸表の中でも特に重要なものとして位置付けられています。
財務分析によって財務諸表の中身を読み解くことで、その会社がどのような財務状況・経営状況にあるのかを読み取ることができます。金融機関から融資を受ける際にも、これらの内容をもとに審査が行われるため、財務分析は会社にとって重要な取り組みの一つであると言えるでしょう。
財務諸表について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
財務分析における「安全性」とは?
財務分析には次の 4 つの分類が存在し、分類ごとに指標や読み取れる内容が異なります。
- 収益性
- 安全性
- 生産性
- 成長性
この中で、今回は「安全性」について詳しくご説明します。
安全性とは、支払能力や倒産リスクなど、その会社の事業の継続性を確認するための指標です。安全性の指標が高いほど、会社が倒産する可能性が低く、安全な経営を実現していることを示します。
そのため、安全性は金融機関や投資家が意思決定を行う際の有効な判断材料になります。金融機関・投資家の目線では、安全性の高い会社に対しては積極的に融資・投資を行いますが、逆に安全性が低い会社は倒産リスクが大きいと判断するため、融資・投資などを控えることが一般的です。
安全性の重要指標
財務分析では、分析作業を行う上で重要となる様々な指標が存在します。そして、実際に財務分析を行う際は、これらの指標をもとに分析作業を進めます。
安全性の主な重要指標としては、
- 流動比率
- 当座比率
- 自己資本比率
- 固定比率
- 固定長期適合率
- 現預金月商比率
- 有利子負債月商比率
などが挙げられます。それでは、各指標について詳しく見ていきましょう。
流動比率
流動比率とは、流動資産に対する流動負債の比率を示す指標です。流動比率の値が高いほど、短期的な支払能力があることを意味しており、流動比率の値が低い場合は資金不足に陥るリスクが高いと言えます。
なお、流動資産とは「 1 年以内に現金化が見込まれる資産」のことであり、売掛金や受取手形などが該当します。そして、流動負債は「 1 年以内に支払期限が訪れる負債」のことであり、買掛金や支払手形などが該当します。
以下、流動比率の算出式です。
流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100
当座比率
当座比率とは、流動負債に対する当座資産の比率を示す指標です。なお、当座資産は流動資産から棚卸資産を除くことで算出でき、現金預金や売掛金などが当座資産の具体例として挙げられます。
流動比率と同様に、当座比率も会社の短期的な支払能力を把握するための指標として用いられます。当座比率が高いほど、短期的な支払能力が高いと判断されるため、その会社は倒産リスクが低いと言えます。
以下、当座比率の算出式です。
当座比率(%)=当座資産 ÷ 流動負債 × 100
自己資本比率
自己資本比率とは、総資本に対して自己資本が占める割合を示す指標です。なお、総資本は「自己資本(純資産)」と「他人資本(借入金など)」から構成されています。
自己資本比率の値が高いほど、その会社は安定した経営を行っていることを意味します。一般的には、自己資本比率は 20% から 30% 程度が理想的とされているため、この値を一つの目安にすると良いでしょう。
以下、自己資本比率の算出式です。
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本 × 100
固定比率
固定比率とは、自己資本に対して固定資産が占める割合を示す指標です。なお、固定資産は長期的に事業で活用される資産のことであり、土地や建物などが該当します。
固定資産に対して投下した資本を回収するためには一定の期間を要するため、固定資産が少ないほど会社の経営が安定していると判断されます。一般的には、固定資産比率が 100% を下回っていれば、長期的な経営状態は安定水準にあると言われているため、この値を一つの目安にすると良いでしょう。
以下、固定比率の算出式です。
固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
固定長期適合率
固定長期適合率とは、固定負債と自己資本の合計額に対して固定資産が占める割合を示す指標です。なお、固定負債とは、返済期間が 1 年を超えるような負債のことであり、長期借入金などが該当します。
固定長期適合率の値が低いほど、固定資産への投資が健全に行われていることを意味します。一般的には、固定長期適合率が 100% を下回っていれば、健全に固定資産への投資を行っていると判断されるため、この値を一つの目安にすると良いでしょう。
現預金月商比率
現預金月商比率とは、月商の何ヶ月分の現金を保有しているのかを示す指標です。事業を安定的に継続するためには、手元にキャッシュ(現金)を保有しておくことも重要なポイントになります。
現預金月商比率を確認することで、その会社の資金繰りの状況を把握できるため、企業の安全性を測る指標として役立ちます。なお、中小企業の場合、現預金月商比率の目安は 150% 程度と言われています。
以下、現預金月商比率の算出式です。
現預金月商比率(%)=(現金+預金)÷ 月商(年間売上高 ÷ 12 ヶ月)× 100
有利子負債月商比率
有利子負債月商比率とは、月商に対して有利子負債が何ヶ月分あるのかを示す指標です。なお、有利子負債とは、金利(利息)を付けて返済しなければならない負債のことであり、金融機関からの借入金などが該当します。
有利子負債月商比率の値が高いほど、有利子負債を返済できなくなるリスクは大きくなり、安定的に経営を行うことが難しくなります。一般的な中小企業の場合、月商の 3 倍以内であれば問題なく返済可能であり、 6 倍を超えると返済が困難になると言われています。
以下、有利子負債月商比率の算出式です。
有利子負債月商比率(%)=(短期借入金+長期借入金+社債)÷ 月商(年間売上高 ÷ 12)× 100
安全性の分析を進めるための 5 ステップ
安全性分析を実施するためには、適切な手順で作業を進める必要があります。本章では、安全性分析のやり方を具体的な 5 つのステップに分けて解説します。
Step.1 貸借対照表の確認
安全性分析の第一歩は、貸借対照表の内容を細かくチェックすることです。貸借対照表には、資産や負債、純資産などの重要なポイントが網羅されており、企業の安全性を判断するための参考情報として活用できます。
この時、短期の流動資産や流動負債、長期の固定資産や負債の割合などに注目するとよいでしょう。これにより、企業の短期的な支払い能力や長期的な財務安定性のベースラインを把握でき、安全性分析を適切に進めることが可能になります。
Step.2 流動比率と当座比率の計算
次に、貸借対照表の情報をもとに流動比率と当座比率を計算します。一般的な目安としては、流動比率が 120% 以上であれば短期的な安全性が高く、当座比率が 100 % 以上であれば十分な支払い能力があると判断できます。
このように、流動比率と当座比率は企業の安全性や資金繰りの健全性を判断するための重要な指標になります。それぞれの算出式は前章で解説していますので、確実に内容を理解しておきましょう。
Step.3 自己資本比率の確認
流動比率と当座比率を計算したら、次に自己資本比率を確認します。なぜなら、企業における財務の安定性を測るためには、自己資本比率が重要な指標になるためです。
自己資本比率が高いほど、企業が自己資本でリスクを吸収できる体力を持っていると判断でき、一般的な目安としては 30% 以上が望ましいとされています。一方、自己資本が不足している場合、負債の増加により財務リスクが高まる可能性があると言えます。
Step.4 固定費率と固定長期適合率の確認
自己資本比率の次は、固定資産に関連する固定費率と固定長期適合率を確認します。これらの指標は、企業の固定資産がどれだけ安定した資金で賄われているのかを測る際に役立ちます。
なお、固定費率は 100% 未満、固定長期適合率は 100% 以下が適切だとされています。特に固定長期適合率が高い場合、短期資金が固定資産に使われているリスクが高いことを示すため、この点は覚えておきましょう。
Step.5 キャッシュフロー分析で現金の流れを把握
最後に、キャッシュフロー分析を行い、企業の現金の流れをチェックします。
特に注目すべきポイントは、
- ・営業キャッシュフロー:本業での収入と支出を表す
- ・投資キャッシュフロー:設備投資や資産の購入・売却による現金の増減を表す
- ・財務キャッシュフロー:資金調達や資本の返済活動による現金の流れを表す
の 3 つです。
営業キャッシュフローがプラスであることは事業活動が健全である証拠であり、投資キャッシュフローのマイナスが大きい場合は新規の設備投資に積極的だと判断できます。また、財務キャッシュフローで過剰な借入や返済がないかもチェックしておくとよいでしょう。
このように、キャッシュフロー分析を行うことで、帳簿上の利益だけでなく、実際の現金の動きを理解できます。
以上の 5 つのステップを踏むことで、企業の安全性を多角的に分析できます。それぞれの指標には固有の意味があり、それらを総合的に判断することで、企業の健康状態をより正確に把握することが可能になります。
安全性の分析を行う際の注意点
安全性の分析においては、いくつか意識すべきポイントが存在します。本章では、安全性分析を行う際の注意点について解説します。
期間に応じて適切な指標を使う
安全性分析を行う際には、短期的な変動と長期的な安定性の両方を考慮する必要があります。そのため、実際の分析作業においては、目的や期間に応じた指標を選ぶことが大切です。
例えば、短期的な分析の場合は流動比率や当座比率を確認し、目先の支払い能力を評価するとよいでしょう。一方、長期的な分析を実施したい場合は、自己資本比率や固定長期適合率をチェックして、長期的な財務基盤を確認する必要があります。
このように、短期の数字だけで分析を進めるのではなく、長期視点も加えて企業の安全性を判断することが重要なポイントになります。
各指標をもとに総合的に判断する
一つの指標に頼りすぎると、企業の財務状況を正確に把握できない場合があります。そのため、個々の数字に固執せず、総合的な視点を持つことが安全性分析を成功させるための鍵になります。
具体例としては、自己資本比率が高い会社の場合でも、キャッシュフローが悪化していると資金繰りに問題が生じるリスクがあります。このように、複数の指標を組み合わせて分析することで、企業の強みと弱みをバランスよく可視化できます。
同業他社や過去実績と比較する
安全性分析を行う際は、数字そのものの大小だけではなく、自社以外の数値と比較しながら分析を進めることが大切です。例えば、同業他社との比較を行うことで、市場における自社の位置づけが明確になります。
また、自社の過去実績と比較すれば、改善や悪化の傾向を把握し、戦略的な判断に繋げることができます。このように、自社の数字を主観的に眺めるだけではなく、具体的な比較対象を用意することで、安全性分析の精度向上に繋がります。
まとめ
本記事では、財務分析における分類の一つである「安全性」について、概要や 7 つの重要指標を一挙にご紹介しました。
財務分析には様々な分類があり、安全性もその中の一つです。企業の安全性を確認することで、その会社の支払能力や倒産リスクなどを把握し、事業の継続性を測ることができます。
ただし、安全性には数多くの重要指標が存在するため、それぞれの内容や算出方法などを正しく理解し、最低限の知識を有した状態で財務分析を行うことが大切です。
万が一、間違った手順で財務分析を行った場合、正しい結果を得ることができずに安全性を誤認してしまうリスクがあるため、不安な方は専門家へ相談することをオススメします。
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