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こんなに沢山あるの?代表的な役員貸付金の消し方 7 選!
役員貸付金は金融機関の融資審査に悪影響を及ぼすため、可能な限り速やかに解消すべきだと言えます。それでは、役員貸付金を解消するためには、具体的にどのような消し方が存在するのでしょうか?
本記事では、役員貸付金の基礎知識や解消すべき理由、代表的な消し方などをご紹介します。役員貸付金に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
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役員貸付金とは?
まずは、役員貸付金の概要についてご説明します。
役員貸付金とは、会社が役員に対して貸し付けた金銭のことを指します。これは、会計上「貸付金」として計上され、会社が役員に資金を提供した状態を表しています。
例えば、役員が個人的な事情で資金を必要とした際に、会社が貸付を行うケースなどが役員貸付金に該当します。その他にも、会計処理上の都合や役員の給与の調整として、形式上の貸付金が発生することもあり、このような場合も役員貸付金の一種として扱われます。
詳しくは後述しますが、役員貸付金は金融機関からの信用低下や法人税の負担増加など、企業にとって様々な悪影響を及ぼします。さらに、株式会社の場合は株主から疑念を持たれるリスクもあるため、役員貸付金は極力避けるべきものだと言えるでしょう。
役員貸付金については以下の記事で詳しく解説しています。
役員貸付金が発生する 3 つのケース
役員貸付金が発生する理由は多岐にわたりますが、ここでは代表的なケースを 3 つご紹介します。どのような背景で役員貸付金が発生するのか、具体的な内容を理解しておきましょう。
役員の個人的な資金補填を行う場合
役員貸付金が発生する代表的なケースとして、役員の個人的な資金補填を行う場合が該当します。例えば、役員が住宅購入や教育費、急な医療費などの個人的な理由で多額の現金を必要とする場合、会社がその不足分を一時的に貸し付けることがありますが、これらの金銭が役員貸付金として会社の帳簿に記載されます。
そして、仮に返済が長期間滞る場合には、税務署から「役員報酬の一部」と見なされ、課税リスクが生じる可能性があります。そのため、役員貸付金で資金補填を行う際は、事前に明確な返済計画を立てることが重要なポイントになります。
経費にできない支出を会社が支払う場合
経費として認められない支出を会社が支払う場合も、役員貸付金として処理されることがあります。これは、本来会社が支払うべきではない費用を会社が一時的に負担した場合、その金銭は役員に対する貸付金として計上されるためです。
例えば、役員の個人的な旅行費や贅沢品の購入代金などが役員貸付金の具体例として挙げられます。このような状況を防ぐためには、会社の支出基準を明確に定めることや、経費の使用目的を徹底的に確認することが大切です。
支払い先が不明な支出がある場合
支払い先が不明な支出が発生した際に、仮処理として役員貸付金に計上されるケースもあります。例えば、帳簿上では支出として記録されているものの、支払い先が不明確な場合、その金額が役員が個人的に利用したものと見なされ、役員貸付金として一時的に処理されるケースなどが該当します。
このような場面では、会社の経理処理が適切でないと税務リスクや監査リスクなどを招く可能性が高まります。そのため、支払いの目的や受取人を明確化し、不明な支出が発生しないような管理体制を整えることが役員貸付金の発生を防ぐための有効な対策になります。
役員貸付金を解消すべき理由
役員貸付金が存在することで、企業は様々な不利益を受けることになります。本章では、役員貸付金を解消すべき理由についてご説明します。
融資審査に悪影響を及ぼす
役員貸付金が多額に残っていると、金融機関からの融資審査に悪影響を及ぼします。貸付金は会社の資産として計上されますが、実際には回収の見込みが不透明な場合が多いため、金融機関から「回収不能のリスクがある資産」と見なされることがあります。
結果として、金融機関からの信用が低下し、必要な資金調達が難しくなる可能性が高まります。金融機関からの信用を獲得し、会社の経営基盤を強化するためにも、役員貸付金は早期に解消しておくことが望ましいと言えるでしょう。
法人税の負担が大きくなる
役員貸付金がある場合、その貸付金が税務署から役員報酬や賞与の一部とみなされる可能性があります。この場合、役員に所得税が課されるだけでなく、会社にも追加の法人税負担が発生することになります。
特に、貸付金に適正な利息が設定されていない場合や返済計画が不明瞭な場合、課税リスクはさらに高まります。このようなリスクを回避し、法人税負担を最小限に抑えるためにも、役員貸付金を速やかに処理する必要があります。
相続人に債務が引き継がれる
万が一、役員が貸付金を返済しないまま亡くなった場合、その債務は相続人に引き継がれることになります。そのため、遺された相続人にとっては役員貸付金が予期せぬ負担となり、最悪の場合はトラブルに発展する可能性も否めません。
また、相続税の申告においても貸付金の処理が問題になる場合があり、家族間の争いを生んでしまう原因にもなり得ます。このように、様々なトラブルを事前に回避するためにも、役員貸付金は早めに解消しておくことをおすすめします。
使途秘匿金とみなされるリスクがある
役員貸付金の使途が不明瞭な場合、税務署から使途秘匿金と判断されるリスクがあります。使途秘匿金と見なされた場合、その金額に対して通常の法人税とは別に 40% の重加算税が課されることがあります。
その結果、経済的な観点からも会社は大きな損害を被ることになります。このような状況を避けるためには、役員貸付金を早期に解消するのはもちろんのこと、どうしても役員貸付金が残ってしまう場合はその使途を明確化し、透明性のある会計処理を行うことが大切です。
代表的な役員貸付金の消し方 7 選
本章では、役員貸付金を解消するための代表的な方法を 7 つご紹介します。
1.役員の自己資金で貸付金を返済する
役員貸付金を解消するための最もシンプルな方法が、役員が自身の資金で貸付金を返済することです。会社から借りた資金を役員個人の貯蓄や収入で返済するため、特別な手続きや帳簿操作は不要になります。
また、この方法のメリットとして、税務リスクが少なく、会社と役員の関係をクリアにできる点が挙げられます。ただし、役員側の資金が十分に確保できている必要があるため、この点には注意が必要です。
2.役員の個人資産を会社に売却して相殺する
手持ちの現金に余裕がない場合は、役員の個人資産を会社に売却して役員貸付金の返済に充当することが可能です。例えば、役員が土地などの不動産を所有していれば、土地を会社へ売却してその代金で役員貸付金を解消します。
ただし、この方法を選択する場合は売却する資産の適正価額を正しく判断したり、売却時に発生する税金を計算したりなど、様々なポイントを考慮する必要があります。そのため、入念な準備をした上で計画的に進めてください。
財産価額の評価方法に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
3.役員報酬・役員賞与で貸付金を相殺する
自己資金からの返済が難しい場合は、役員が受け取る報酬や賞与を貸付金の返済に充てる方法もあります。具体的には、会社の帳簿上で役員報酬や賞与額を支払い済みの貸付金と相殺する形で処理を行います。
この方法は、役員報酬が定期的に支払われている場合に適用しやすく、役員の手元資金に影響を与えずに貸付金を消せる点が大きな特徴です。ただし、報酬や賞与が税務上適切な水準であることを確認する必要があるほか、役員報酬や役員賞与は「給与」に該当するため、社会保険料や税金が課せられる点にも注意が必要です。
4.役員退職金で貸付金を相殺する
役員退職金とは、役員が会社を退職する際に受け取るお金のことであり、この役員退職金を貸付金の返済に充てる方法も存在します。退職金を計算し、その金額の一部または全額を貸付金に充当することで、帳簿上の貸付金を削減できます。
退職金には税制上の優遇措置が設けられているため、税負担を軽減できる可能性がある点がこの方法のメリットです。ただし、退職金の金額設定が不当に高いと判断された場合、税務署から否認されるリスクがあるため、公正な評価が求められます。
5.自己株式の取得対価で貸付金を相殺する
役員が保有する自社株式を会社が買い取り、その買い取り代金を貸付金と相殺する方法も代表的な役員貸付金の消し方の一つです。株式の評価額を適切に算出することで、その株式評価額と同額分の役員貸付金を減らすことができます。
この方法では、税務リスクや株主からの透明性の要求を考慮する必要があるものの、資金の移動を伴わずに処理できる点が大きなメリットです。ただし、役員が保有する自社株式が少ない場合、貸付金と相殺できる金額は小さくなってしまうため、この点には注意が必要です。
6.貸倒れ処理(債権放棄)を行う
貸倒れ処理とは、役員貸付金を回収不能と判断し、会社が債権を放棄することで帳簿上から貸付金を消す方法です。処理としては「貸倒損失」として計上しますが、税務署から「利益供与」と見なされ、役員に所得税が課されるリスクがあります。
また、株主への説明責任が求められるため、貸倒れ処理を行う際には、慎重に手続きを進めなければいけません。このように、貸倒れ処理は役員貸付金の消し方としては推奨できるものではないため、他の方法が困難な場合に残される選択肢として覚えておきましょう。
7.外部から借入して貸付金を返済する
役員が自己資金や資産を持っておらず、役員報酬や役員賞与、役員退職金からの返済も難しい場合、役員が外部から借りたお金で役員貸付金を返済する方法もあります。
しかし、役員目線ではお金の返済先が変わるだけで根本的な解決にはなりません。そのため、貸倒れ処理と同様に、外部からの借入はどうしても役員貸付金を解消したい場合の最後の手段と言えるでしょう。
まとめ
本記事では、役員貸付金の基礎知識や解消すべき理由、代表的な消し方などをご紹介しました。
役員貸付金は融資審査にマイナス影響を与えるため、自社の決算書に役員貸付金の記載がある場合は早めに解消することをオススメします。ただし、役員貸付金の解消方法は多岐にわたるため、自社にとって最適な方法を選択してください。
もし、自分ひとりで判断できない場合は、専門家への相談も有効な選択肢の一つになります。プロの目線から助言を受けることができ、スムーズに手続きを進められることはもちろん、困った時に相談を行うことも可能です。
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