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トラブル実例!一括贈与した教育資金を無駄遣いされた場合はどうなるの?

父母や祖父母が子や孫のために教育資金を援助してあげることは珍しくありません。そして、教育資金を一括贈与する場合、一定の金額までは非課税で贈与を行うことができます。
しかし、一括贈与した教育資金を無駄遣いされてしまった場合はどうなるのでしょうか?本記事では、教育資金の一括贈与に関する基礎知識を解説しつつ、教育資金を無駄遣いされてしまったケースについて詳しくご紹介します。
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贈与とは?
はじめに、贈与について正しく理解しておきましょう。
贈与とは「自身の財産を無償または負担付きで第三者に譲ること」を意味する言葉です。一般的には、贈与を行う人が財産を譲る旨の意思表示を行い、その内容について相手が承諾することで正式に贈与が成立します。
そのため、自分の財産を誰かに贈与したいと考えている場合でも、相手の同意なしで贈与を行うことはできません。事前に贈与の内容を説明し、相手の同意を取得する必要があります。
また、贈与を行う際には「贈与税」と呼ばれる税金が発生しますが、贈与税には「暦年課税」という考え方があり、相続税と同様に基礎控除が設けられています。贈与税の基礎控除による非課税枠は「年間 110 万円」であるため、贈与を受けた金額が年間 110 万円までであれば、贈与税を支払う必要はありません。
また、基礎控除は「贈与を受ける人」に対して設けられている非課税枠であるため、仮に複数人から贈与を受けたとしても、その合計額が年間 110 万円を超えた場合は贈与税の課税対象となります。
以下、一般贈与財産における贈与税の税率です。
このように、贈与税は贈与された金額が大きくなるほど、その税率は高くなります。また、特例贈与財産(直系尊属から 18 歳以上の人へ贈与する財産)の場合、一般贈与財産と比較して税率が低く設定されています。
贈与税について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
教育資金の一括贈与とは?
前述した通り、贈与を行なった場合は年間 110 万円(基礎控除額)を超えた金額に対して贈与税が課税されます。しかし、一括贈与にはいくつかのお得な制度が存在しており、特定の目的のために一括贈与を行う場合は一定額まで贈与税が非課税になります。
例えば、結婚資金や子育て資金、住宅資金などが挙げられます。そして、教育資金の一括贈与にも非課税枠が設定されており、最大 1,500 万円までは贈与税が発生することはありません。
この制度は 30 歳未満の人が直系尊属(父母や祖父母など)から「教育資金に充てるための金銭など」の贈与を受けた場合に適用できます。なお、受贈者は贈与者の子供または孫である必要があります。
本制度は、教育が必要な人に対して「一人当たり 1,500 万円」が非課税となるため、仮に 3 人分の教育資金を一括贈与する場合は合計 4,500 万円を非課税で贈与することができます。ただし、学校以外に支払う費用の場合は「一人当たり 500 万円」が非課税枠の上限となっています。
なお、上記の条件を満たしている場合でも、信託を設定する日・信託財産を追加する日において、受贈者の前年の合計所得金額が 1,000 万円を超える場合は本制度を利用できないため、この点には注意が必要です。
一括贈与に関するお得な制度については以下の記事で詳しく解説しています。
教育資金の一括贈与の対象費用
教育資金の一括贈与は、その名前の通りに教育に関する費用に対して適用されます。そして、非課税枠の上限は教育資金の用途によって異なり、学校に支払うものは 1,500 万円、学校以外に支払うものは 500 万円として上限金額が設定されています。
以下、教育資金の一括贈与を適用できる対象費用の一例です。
【学校に支払うもの】※非課税枠; 1,500 万円
・入学金、入園料、入学検定料など
・授業料、保育料、施設設備費など
・在学証明書代、卒業証明書代など
・給食費、スクールバス代、遠足費、修学旅行費、部活動費、寮費など
・PTA、生徒会、学級会などの会費
・大学入試センター試験受験料など
※書店で購入した教科書以外の書籍や下宿代、同窓会費などは対象外
【学校以外に支払うもの】※非課税枠: 500 万円
・学校が書面で購入を依頼した学用品(ランドセル、教科書、上履きなど)
・制服、ジャージなど学校指定の学用品校外学習の活動費用
・卒業アルバム・写真代
・通学定期代
・学習塾、予備校、家庭教師などの月謝
・スポーツ教室や習い事などの月謝、指導者を通して購入した物品、交通費など
・学童保育の費用
※受贈者が 23 歳以上の場合、趣味の習い事に使った費用は対象外
このように、教育資金の一括贈与は利用目的が教育資金に限定されています。とは言え、教育資金であれば用途は幅広いため、どのような費用が対象になるのかを正しく理解しておきましょう。
教育資金の一括贈与のメリット
教育資金の一括贈与を活用することで、どのような恩恵を受けられるのでしょうか?本章では、教育資金の一括贈与のメリットについて解説します。
一括贈与を非課税で行える
教育資金の一括贈与の最大の魅力は、贈与税の負担を大幅に軽減できる点です。通常、贈与税は年間 110 万円を超える贈与に対して課税されますが、教育資金の一括贈与を利用すれば、子や孫などの直系卑属に対して最大 1,500 万円まで非課税で贈与することが可能です。この制度を活用することで、資産を効率的に次世代へ移転でき、贈与者と受贈者の双方にとって経済的なメリットを生み出せます。
教育資金に限定した贈与を行える
教育資金の一括贈与は、使途が教育に限定されているため、資金が適切に使われる安心感があります。前述した通り、対象となる支出は学費だけでなく、入学金や受験料、塾や習い事の費用、さらには学校への通学に必要な交通費など広範囲に及びます。そのため、子や孫の学びを全面的にサポートすることが可能であり、自分の資産が有意義に活用される実感を得られるでしょう。
教育資金の一括贈与のデメリット
教育資金の一括贈与は便利な制度ですが、一方で注意すべきポイントもいくつか存在します。次に、教育資金の一括贈与のデメリットをご紹介します。
資金を使いきれない場合は贈与税の対象になる
教育資金の一括贈与は、非課税という大きなメリットがある一方で、贈与した資金を使いきれなかった場合には注意が必要です。仮に、受贈者である子や孫が 30 歳になるまでに贈与資金を使い切れない場合、その残額が贈与税の対象となります。例えば、進学をしなかったり、予想よりも教育費が少なく済んだりした場合には、余剰資金に対して課税されるリスクが発生するため、教育費の見積もりは慎重に行うことが大切です。
出金するための手続きに手間が掛かる
教育資金の一括贈与で受け渡した資金は、受贈者の普通預金に入るわけではなく、信託銀行をはじめとした金融機関で管理されます。そして、資金を出金する際には領収書を金融機関へ提出し、都度承認を取得する必要があります。このように、出金するための手続きに一定の手間が発生する点は、教育資金の一括贈与のデメリットの一つだと言えるでしょう。
契約後の途中解約はできない
教育資金の一括贈与で開設した専用口座は、契約後の途中解約が原則として認められていません。加えて、一度贈与した資金は教育以外の目的に使うことはできないため、計画的な資金設定が重要なポイントになります。万が一、急な出費や家庭の事情で贈与資金を他の用途に充当したい場合でも、そのような使い方は不可能であるため、資金計画を十分に検討してから贈与を行うことが求められます。
このように、教育資金の一括贈与を利用する際には、いくつかの注意点が存在します。これらのデメリットを理解した上で制度を活用することで不要なトラブルを防ぎ、贈与のメリットを最大限に引き出せるでしょう。
教育資金の一括贈与に関する税制改正(令和 5 年度)
教育資金の一括贈与に関しては、令和 5 年度に税制改正が行われています。どのような点が変わったのか、大きく 3 つに分けて具体的な内容を解説します。
期間の延長
教育資金の一括贈与にかかる非課税制度は「平成 25 年 4 月 1 日から令和 5 年 3 月 31 日」が対象期間となっていましたが、令和 5 年度の税制改正により、令和 8 年 3 月 31 日までの期間延長が決定されました。教育資金の一括贈与を検討されている方は、上記の期限に間に合うように準備を進めましょう。
相続財産 5 億円を超える者の管理残高への相続税課税
贈与された教育資金を使い果たす前に贈与者が亡くなった場合、管理残高(使いきれなかった金額)に対しては相続税が発生しますが、税制改正前は受贈者が 23 歳未満である場合や学校に在学している場合など、一定条件を満たしていれば相続税の課税が免除されていました。
しかし、令和 5 年度の税制改正に伴い、贈与者の死亡に関わる相続税の課税額が 5 億円を超える場合は、上記の要件を満たす場合でも管理残高に対して課税される仕組みに変更されました。具体的には、令和 5 年 4 月 1 日以降に拠出する場合は変更後のルールが適用されるため、この点には注意しておきましょう。
また、令和 3 年 4 月 1 日以降に拠出された教育資金贈与の管理残高について、相続税の課税対象となった資産を贈与者の子以外(孫など)が相続する場合は、相続税が 2 割加算で課税されます。このような資金の拠出時期に応じた相続税の計算は、過去の税制改正に伴う様々な留意点が存在するため、自分ひとりで判断せずに専門家へ相談することをオススメします。
以下、国税庁が公表している「信託受益権又は金銭等の取得時期に応じた贈与者死亡時の相続税の課税関係」です。
※出典:国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関する Q&A 」
贈与資金を使い切れなかった場合の贈与税の税率
贈与された教育資金を受贈者が 30 歳までに使い切れなかった場合、その残額には贈与税が課税されることになります。そして、従来は受贈者の年齢に応じて異なる税率が設定されており、 18 歳未満は一般税率、 18 歳以上は特例税率が適用される仕組みとなっていました。
以下、それぞれの税率を表にまとめます。
しかし、令和 5 年度の税制改正により特例税率は廃止され、年齢を問わずに全てのケースにおいて一般税率が適用されることになりました。令和 5 年 4 月 1 日以降に贈与を行う場合は、令和 5 年の改正内容が適用されるため、税金額を計算する際にはこの点に注意しておきましょう。
贈与税の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
一括贈与した教育資金を無駄遣いされた場合はどうなる?
ここで、祖父が孫のために 1,000 万円の教育資金を一括贈与するケースを考えてみましょう。この時、上述した非課税枠を利用すれば、贈与税の支払いを回避することができます。
それでは、一括贈与した教育資金を孫が無駄遣いした場合はどうなるのでしょうか?教育資金の一括贈与は最大 1,500 万円までであれば贈与税が非課税になりますが、この制度は贈与されたお金が教育資金として使われることが前提条件です。
そのため、孫がお金を教育資金以外の用途に使ってしまった場合、非課税枠を適用することはできずに贈与税の課税対象になります。なお、贈与されたお金を使う際は領収書などを保管し、教育資金として充当したことを証明する必要があります。
このように、一括贈与した教育資金を無駄遣いされた場合は、贈与したお金に対して贈与税が課税されることが一般的です。子や孫に一括贈与を検討している方は、目的以外の用途に利用しないよう、念押しをしておくことをオススメします。
まとめ
本記事では、教育資金の一括贈与に関する基礎知識を解説しつつ、教育資金を無駄遣いされてしまったケースについて詳しくご紹介しました。
教育資金の一括贈与には非課税枠が設定されており、最大 1,500 万円までであれば贈与税が非課税になります。ただし、この非課税制度は教育資金の用途で一括贈与が行なわれた場合にのみ適用可能です。
仮に、贈与を受けた相手が教育資金を別の用途で無駄遣いした場合、贈与を受けたお金に対して贈与税が課税されますので、この点には十分に注意しておきましょう。
もし、自分ひとりで判断できない場合は、専門家への相談も有効な選択肢の一つになります。プロの目線から助言を受けることができ、スムーズに手続きを進められることはもちろん、困った時に相談を行うことも可能です。
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