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事業承継における相続税対策とは?事業承継税制の仕組みや手続き方法を徹底解説!

事業承継において、相続税の負担は後継者にとって大きな課題となります。しかし、適切な対策を講じることで、その負担を大幅に軽減できることをご存知でしょうか。
本記事では、事業承継や相続税に関する基礎知識に加えて、相続税対策に有効な事業承継税制について詳しく解説します。少しでも税負担を減らしたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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事業承継とは?
事業承継とは、会社の経営権や資産を現経営者から次世代の後継者に引き継ぐことを意味します。株式や事業資産の移転が事業承継の代表例ですが、経営ノウハウや取引先との信頼関係の継承なども事業承継という言葉の中に含まれています。
そして、中小企業や家族経営の会社においては、事業承継が会社の存続を左右する重要なプロセスだと言えます。後継者は親族の場合もあれば、従業員や外部の第三者が引き継ぐケースもあります。
ただし、税金や資金調達、後継者の育成など、事業承継を行う際には乗り越えるべき課題が多く存在することを覚えておきましょう。
事業承継時に発生する税金
事業承継時に発生する税金としては、主に相続税や贈与税が挙げられます。後継者が経営権を引き継ぐ際、会社の株式や不動産、設備などの資産が対象となり、それらの評価額に基づいて税金が課されます。
会社の価値が高い場合には、相続税や贈与税が後継者にとって大きな負担となり、円滑な承継を阻む壁となります。また、税金以外にも、譲渡所得税や登録免許税といった費用が発生するケースも存在します。
これらの負担を軽減するためには、事業承継税制の活用をはじめとした早期の対策が求められます。このように、計画的な税金対策を行うことで、税金の負担を最小限に抑え、事業承継を円滑に進められるようになります。
相続税の基礎知識
事業承継は相続税や贈与税を伴うケースが一般的ですが、今回は相続税に焦点を当てて解説します。まずは、相続税の基礎知識について理解しておきましょう。
相続とは、亡くなった人が生前に所有していた財産や権利義務などを特定の人が受け継ぐことを意味する言葉です。この時、亡くなった人(遺産を渡す人)を「被相続人」と呼び、遺産を受け取る人を「相続人」と呼びます。
相続人となる人は民法で定められており、被相続人の配偶者や子供など、生前に被相続人と近しい関係にあった親族が遺産を受け継ぐことが一般的です。このように民法で定義された相続人のことを「法定相続人」と呼び、法定相続人は被相続人との関係により優先順位が決められています。
そして、相続税は相続を受けた人(相続人)が納めるべき税金のことであり、相続人全員に相続税の納税義務が発生します。相続税の金額は遺産総額によって変動しますが、「基礎控除」も相続税の納税額に影響を与えます。
基礎控除額は以下の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000 万円 + ( 600 万円 × 法定相続人の数)
例えば、夫(会社の経営者)と妻、子供 2 人が一緒に暮らしている家庭で父親が亡くなった場合、法定相続人は妻と子供 2 人の「計 3 人」であるため、基礎控除額は 4,800 万円となります。
つまり、相続財産が 4,800 万円以下であれば相続税を納める必要はなく、相続財産が 4,800 万円を超えている場合は、その超過分に対して相続税が発生します。
相続税に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
相続税対策に有効な「事業承継税制」とは?
事業承継税制とは、事業を次世代に引き継ぐ際に発生する相続税や贈与税の負担を軽減するための税制優遇措置です。中小企業が後継者に株式や事業資産を引き渡す際、条件を満たせば税金の納税を猶予または免除することができます。
この制度は、事業存続や地域経済の安定を図るために設けられたものです。一般措置と特例措置の 2 種類に分けられており、それぞれ適用条件や対象範囲は異なるため、自社の状況に合わせた活用が求められます。
また、税制の適用を受けるには、事前の計画作成や手続きが必要となるほか、一定期間の雇用維持や事業継続といった要件を満たす必要があります。そのため、自分ひとりで対応するのが不安な場合は、税理士をはじめとした専門家にサポートを依頼することも有効な選択肢になります。
大谷聡税理士事務所でも事業承継税制に関する相談をお受けしています。関心のある方は、以下の問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
事業承継税制の仕組み
事業承継税制には、一般措置と特例措置という 2 種類のパターンが存在します。それぞれについて、具体的な内容を見ていきましょう。
一般措置
事業承継税制の一般措置とは、事業を引き継ぐ際に発生する相続税や贈与税の納税を一定条件のもとで猶予できる制度です。贈与税の場合、後継者が取得した株式のうち最大 80 %が猶予の対象となり、相続税では事業用資産や株式にかかる税金の全額が猶予されます。ただし、雇用維持や事業継続といった条件を満たす必要があり、手続きが複雑である点は覚えておきましょう。
特例措置
事業承継税制の特例措置とは、一般措置よりもさらに有利な条件で相続税や贈与税の負担を軽減できる制度です。特例措置においては、株式の贈与税や相続税の 100% が猶予の対象となるため、後継者の税負担を実質ゼロにすることが可能です。
ただし、この措置を利用できるのは特定の中小企業のみに限られており、加えて 2027 年 12 月 31 日までの期間限定となっています。また、適用を受けるためには、事前確認申請や 5 年以内の計画的な事業承継など、厳格な条件をクリアする必要があります。
以下、事業承継税制の一般措置と特例措置の違いを表にまとめます。
事業承継税制のメリット
企業が事業承継税制を活用することで、どのような恩恵を受けられるのでしょうか。本章では、事業承継税制のメリットを 3 つに分けてご説明します。
税負担を大幅に軽減できる
事業承継税制の最大のメリットは税負担の大幅な軽減です。相続税や贈与税の納税が猶予または免除されるため、後継者の税負担を大幅に抑えられます。特に特例措置を利用すれば、株式承継にかかる税金が実質ゼロになるケースもあり、資金繰りの負担を抑えながらスムーズに事業を引き継ぐことが可能です。
安定的な事業存続を実現できる
安定的な事業存続を実現できる点も事業承継税制のメリットの一つです。税金の負担が軽減されれば、後継者が資金面の問題に悩まされることなく、事業の成長や安定的な運営に集中できます。これにより、地域経済の活性化や雇用の維持にも直結するため、中長期的な企業価値の向上に繋がります。
計画的な事業承継に繋がる
事業承継税制を利用するためには、事業承継計画の作成や承継後の運営状況の報告などが求められます。これらは一見するとデメリットのように感じるかもしれませんが、言い換えれば自社を客観的に見直す絶好の機会となります。このように、経営者と後継者が早期から具体的な計画を立てることで、スムーズかつ効率的な事業承継を行うための土台を整備できます。
事業承継税制の適用条件
事業承継税制は相続税対策に有効な制度ですが、適用を受けるためには様々な条件をクリアする必要があります。本章では、事業承継税制の適用条件について解説します。
先代経営者が満たすべき条件
事業承継税制を利用するには、先代経営者が一定の条件を満たしている必要があります。例えば、会社の代表者であることや、先代経営者が亡くなってから 5 ヶ月以内に後継者が代表者になっていること、などが挙げられます。
また、相続の場合には、先代経営者が亡くなった時点で後継者が役員である必要があります。ただし、 70 歳未満で亡くなった場合はこの条件を満たす必要はないため、この点もあわせて覚えておきましょう。
後継者が満たすべき条件
事業承継税制の適用を受ける場合、後継者が相続時に会社の役員である必要があります。加えて、後継者が 18 歳以上であること、株式の一定割合を所有していること、承継後に会社の代表者に就任することなどが求められます。これらの条件は、後継者が実質的な経営責任を負うための準備だと言えるでしょう。
会社が満たすべき条件
事業承継税制を適用できる会社は、中小企業基本法に基づく中小企業であることが必須条件となります。また、資本金が 3 億円以下の会社のみが適用対象となるため、この点にも注意しておきましょう。加えて、資産管理会社ではなく、実際に事業を行っている会社であることが求められます。
事業承継税制が開始された後の条件
税制適用後は、承継した株式や事業を一定期間保持し、会社の経営を継続することが条件となります。具体的には、雇用の 8 割以上を 5 年間維持すること(特例措置の場合は不要)や、毎年所定の報告書を税務署に提出することが義務付けられています。これらの条件を満たしていない場合、猶予された税金が遡って課税される可能性があるため、注意が必要です。
事業承継税制の手続き方法
事業承継税制の適用を受けるためには、定められた手順で手続きを進めていく必要があります。本章では、事業承継税制の手続き方法を 5 つのステップに分けて解説します。
Step.1 事業承継計画の作成
まずは、事業承継計画を作成して経済産業大臣の認定を受ける必要があります。事業承継計画を作成する際には、後継者の選定や事業承継後の運営方針などを具体的に記載しましょう。なお、計画の提出期限は「先代経営者が亡くなる前日まで」と定められているため、早めに準備しておくことが大切です。
Step.2 相続開始後の申告書提出
相続が発生した場合、相続税の申告期限である 10 ヶ月以内に、納税猶予の適用を受けるための申告書を税務署に提出します。この時、税制の適用条件を満たしていることを証明する書類もあわせて提出する必要があるため、漏れのないように手続きを進めましょう。
Step.3 特例承継計画の提出
相続税の猶予を受けるためには、特例承継計画を都道府県知事に提出する必要があります。特例承継計画では、後継者が事業承継を円滑に進めるための取り組み内容を具体的に記載しましょう。その後、提出した特例承継計画が認定されれば、相続税の猶予の適用が正式に確定することになります。
Step.4 経営状況の報告
税制適用後は、会社の経営状況や雇用維持状況などを記載した報告書を税務署に毎年提出しなければいけません。この報告書には株式の保有状況や従業員数の変動なども含まれており、承継計画に沿った経営が行われているかどうかをチェックする目的で使われます。そのため、自社の経営状況を正確かつ客観的に報告書へ記載し、透明性の高い事業運営を心がけることが重要なポイントになります。
Step.5 猶予された税金の免除手続き
会社の経営が一定期間継続され、所定の条件を満たした場合には、猶予されていた相続税が免除されます。ただし、免除の手続きを行うためには、税務署に必要書類を提出し、最終的な確認を受ける必要があります。そのため、計画的な手続きと継続的な条件管理が、事業承継税制の適用を受けるための鍵になると言えるでしょう。
まとめ
本記事では、事業承継や相続税に関する基礎知識に加えて、事業承継税制の基本的な仕組みや手続き方法などを解説しました。
事業承継時には、相続税をはじめとした納税義務が発生することが一般的ですが、事業承継税制を活用すれば税負担を大幅に軽減できます。この記事を読み返して、事業承継税制の仕組みや手続き方法などを理解しておきましょう。
もし、自分ひとりで進めるのが不安な場合は、第三者への依頼も有効な選択肢になります。専門家に相談することで、自社の状況に合わせた助言を受けられるほか、事業承継税制の手続きをサポートしてもらうことも可能です。
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